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刑務所や刑務官を主題とした映画やマンガは数多くある

そのような作品の一部には、”作者が元受刑者”というアンタッチャブルな側面もあり、単に娯楽作品としては割り切れないドキュメンタリー的な部分も垣間見えるので興味深いと言えるだろう。

中でも、2002年に公開され多くの話題を集めた映画が「刑務所の中」という映画作品だ。原作は花輪和一の同名マンガ。

実は作者自身が逮捕され刑務所へ入って中の様子を体験したうえで描かれた”実録作品”である事に留意したい。

刑務所の中 (講談社漫画文庫 (は8-1))

刑務所の中 (講談社漫画文庫 (は8-1))
4063703142 | 花輪 和一 | 講談社 | 2006-05-12

同作品ではとくに刑務所の中の食事の描写の細かさが話題になり、映画版でもそれは忠実に原作が踏襲されている。観た人からは「刑務所では意外にいいものを食べている」とか「食いたいけど、入るわけにはいかねえし・・・」「用便願いまーす!」といった声が聞こえている。


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映画で登場するのは架空の『北海道日高刑務所』

だが、花輪氏が実際に収監されていたのは函館少年院であり、同院では成人の収容者もいる。

劇中にて、優良受刑者たちのみに許される2級受刑者集会という映画鑑賞会が描かれているが、受刑者たちが映画『キッズリターン』を見ながら淡々と流れ作業のように”甘ャリ”こと『アルフォート』を口に運んではコーラで流し込むという、見ていて何とも言えないシーンがある。

甘い菓子は「甘シャリ」と呼ばれ、普段は祝日か正月、そしてこのような受刑者集会でなければ口にすることは許されない。受刑者たちのつかの間のひと時。映画に夢中になり、気が付けばアルフォートの残りが数枚に・・・。

映画が終われば、そこで楽しいひと時も終わり、菓子の包装とコーラの空き缶はその場で回収され、映画の感想を口々に述べることも許されず、無言かつ、2列縦隊でそれぞれの居住する雑居房へ戻される。菓子を房に持ち帰ることは当然できない。刑務官へのアテツケなのか、空き缶を乱暴にゴミ箱に投げていく者もおり、刑務官の目がぎろりとするのも演出が細かい。

ところで、この花輪氏。彼の本業はマンガ家であるが、なぜ刑務所へ収監されることになったのかといえば、元来のモデルガン収集癖がたたり、壊れたコルトガバメントという真正拳銃を所持していたために銃刀法違反で逮捕されたことによる。この映画を観終わって気が付いたのだが、この作品には冒頭のミリタリーキャンプ(コンバットゲーム)シーンから含め、女性が一人も出てこない。男性のみ収監される刑務所が舞台なのだから、当然といえば当然ではあるのだが。

皆さんもこの映画を見るときは、アルフォートとコーラを用意すると良いかもしれない。

刑務所を描いているが、現実に問題となっている受刑者同士の深刻なイジメや暴力といったようなシーンは無く、怖いシーンと言えば、受刑者たちが青空の下で犯罪を淡々と告白する場面や、それにやっぱり刑務官が受刑者を怒鳴り散らす場面だろうか。

とくに、老受刑者がクロスワード雑誌にそのまま答えを書き込んでしまい、不正行為として厳しく摘発されて数名の刑務官に独房へ連行されるシーンはあまりに無慈悲で胸が苦しくなった。

それでも全体的には、花輪氏を演じる山崎努をはじめとする同房の受刑者の面々の演技や、仄々とした音楽のためか、刑務所を描いていながら何処となく、安穏とする不思議な映画になっている。

むしろ、ブラック企業を描いた映画のほうがより凄惨だったりしてな。

なお、彼がブチ込まれる原因となったコルト・ガバメントの入手や、修理のクダリはマンガ「刑務所の前」で読めるぞ。

さて、刑務所の食事、檻メシと言えば、「極道めし」という土山しげるの漫画作品も捨てがたいだろう。土山しげるも食い物にはなんかウルサイ漫画家の一人として、「噴飯マン」など飯を扱った漫画作品の多さは知られている。

ただ、本作の主な題材はムショという究極の空間で各受刑者が披露する「美味いメシのはなし」であり、上記の花輪の作品とは多少異なる。刑務所では年に一回の正月に豪華なおせちが出るが、それを賭けて同室の受刑者たちがそれぞれ、『過去にシャバで食べた美味い物の回想』をみんなの前で語るバトルを繰り広げるという一風変わった作品なのだ。

やはり各受刑者はメシに対してそれぞれの逸品なエピソードを持っており、なぜ刑務所に落ちてきたのかなど身の上も語られるのが興味深い。

そして、それぞれの受刑者から各自自慢の美味いメシ話が披露され、周りで聴いていた同室の受刑者たちの喉をゴクリと鳴らした数の多い受刑者が勝ちだ。

無論、他の受刑者から食事を融通してもらうのは規則違反で、刑務官に見つかれば懲罰を食らう。なおこちらも映画化されている。

アメリカ映画の中の刑務所

壮大なスケールで描かれた大作「グリーンマイル」はいささか年代が古い時代を描いた作品だが、受刑者(死刑囚)と刑務官たちの心温まる交流が心癒される名作だ。

スタローン主演のロックアップも注目。撮影はニュージャージー州ラーウェイにある東ジャージー州刑務所で本物の囚人をエキストラに動員して行われたのだ。


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