懲役たちは毎朝、刑務官の起床の合図を聞くやいなや、15分で布団をたたみ、房内の清掃と洗面、髭剃りなど朝の身支度を済ませ、呼称点検を受ける。それが終われば、配食準備の声がかかるまでおとなしく、雑居房内で座して待つ。こうして刑務所の1日がはじまるのだ。
受刑者に対する不思議な検査・カンカン踊りとは?
受刑者たちは毎朝、房内を出て整列すると工場に行進で出役するのだが、工場へ着いてもいきなり作業ははじまらない。
受刑者たちは工場の更衣室で作業服に着替えるのだが、その前に検身場で素っぱで整列し、刑務官に検査を受ける。
検身場とはその名の通り、刑務作業の前後に体の検査をする場所であるが、検査と言っても健康診断ではなく、「何か変なものを隠していないか」を調べるための持ち物検査である。
そこで検査の時に奇妙な格好をするのが「カンカン踊り」。カンカン踊りは全○になって自分の番号を申告し、次いで手の平や手の甲、足の裏、口の中、ベロまで出して刑務官に見せて「何も持ってません」と証明する奇怪な踊りである。
工場には各種の工具があり、なかにはそれを持ち出して争いの道具にする受刑者もいる。
基本的に男性受刑者のみに行われているが、受刑者たちは服を着ていない状態で、一人づつ刑務官の前に出るなり、受刑者番号を大きな声で申告していく。次いで、両腕を上げ手の平と甲を裏表、数回見せたら今度は足も同じように見せる。最後には口を開き舌を見せるのだが、刑務官が納得して『良し!』と言わない限りは終わらない。
これが済んではじめて工場着に着替える事が許され、作業前準備にとりかかれるわけだ。
当然、作業終了後も同様の検査を受けてからの帰房となる。
決して踊りではないのだが、元は江戸時代に流行した「看々踊(かんかんおどり)」に由来するとか、あるいは足を上げる様がフランスの踊り、フレンチカンカンに似ているからするという説もある。
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このカンカン踊りを映像で見たいのなら映画「刑務所の中」をおすすめする。そこには役者たちが、カンカン踊りを実際にやって見せるシーンが描かれている。映像で見るとやはり滑稽だ。
現在では、このカンカン踊りも人権に配慮し、各刑務所長の裁量によっては行われていない刑務所もある。また、大阪刑務所など一部では下着を着用させて実施されるようになってきてはいるが、ほとんどの刑務所では今なお、全○で行われているようである。
刑務所へ入ると、もっとも嫌な思いをするのが、入所時の知能検査のための中学生レベルの国数社のテスト、用便申告、そしてこのカンカン踊りであろう。
ただ、この点検も受刑者にとって屈辱的なものだけとは言えない。
同じ部屋の受刑者から暴行がされていないか体のキズの確認も兼ねており、受刑者の身の安全にもなるとこのことだ。
実体験!お笑い「刑務所生活」 (廣済堂ペーパーバックス)
433151322X | 西本 裕隆 | 廣済堂出版 | 2008-05-30
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